コラム --さよならヴィジュアル系--
さよならヴィジュアル系


さよなら「ヴィジュアル系」〜紅に染まったSLAVEたちに捧ぐ〜 (竹書房文庫 い 1-1)さよなら「ヴィジュアル系」
〜紅に染まったSLAVEたちに捧ぐ〜
(竹書房文庫 い 1-1)

(2008/05/09)
市川 哲史

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 当サイトに来れられる方に多々いるであろうヴィジュアル系通過リスナーは市川哲史氏のこの本はもうお読みになりましたか?ん、まだ読んでいない?そりゃあ読んだ方がいいと思いますよ。

 本著は「ヴィジュアル系の父」などとも呼ばれその文章力にも定評がある市川哲史が2005年、2006年に立て続けに発表した2冊の本「私がヴィジュアル系だった頃」「私もヴィジュアル系だった頃」の内容を再編し、新たに書き下ろし原稿を加えた文庫バージョン(800円と安いです)。再結成を果たしたXやLUNA SEAを基本軸に置きながらも400ページにも及ぶ特盛の内容で日本特有のロックといえるこの不思議な現象・ヴィジュアル系を徹底的に語っておられます。

 市川氏の人脈を生かし実現した豪華な対談が本著の根幹。YOSHIKI、PATA、SUGIZOとヴィジュアル創世記を支え、最近再結成を果たしたXとLUNA SEAの面々。さらには大槻ケンヂ、小室哲也との対談も収録されている。そして苦楽を共にしたというV系ライターの大島暁美(本当はHR/HMらしいが)まで、幅広い。そしてどの対談も非常に濃密で赤裸々な内容となっている。

 まずYOSHIKI、続いてPATAの対談。Xについての歴史が刻々と述べられ、踏み込んだ話も多い。けれど印象に残ったのはそのキャラクター。破天荒な完璧主義者・YOSIKIと傍観者・PATA。核であった人物から語られたXと一歩引いた目線から語られるX。その部分、比較して読んでると凄くおもしろいんだよね。そして3月の再結成公演3DAYS、長年彼等を近くで見てきた市川氏にはこう映ったそうだ。「10年経ったとは思えないアグレッシヴなグダグダ感」、「なぜか物足りないちゃんとした2日目と3日目」。この人がこう言うとなんだか納得してしまう。さらに彼等の本質を見事に突いた「Xは劇場である」との言葉。まさしくその通り!と思わず唸ってしまう。

 SUGIZOとの対談は本当に赤裸々・・・。だって『LUNA SEAは大いなる失敗バンド』だとはっきりと語っているんですよ?「バンドの顔がロックを捨てた」「5人にもっとわかりあう気持ちがあったら、バケモノバンドになれた」という衝撃の発言の数々。本当に冷静というか、バンドから離れることによって色々な切り口から分析をし、それを大胆に語る。改めてSUGIZOという男の凄さを感じた。それと同時にLUNA SEAというバンドを大事にしてきた想いと常にバンドの進化を切望した姿勢のかっこよさが伝わってきた。一切の妥協のないSUGIZOだからこその歯がゆさが文脈から伝わってくる。あの再結成は果たしてメンバー全員が納得した上でのことだったのか?メンバー一人一人の思いはもちろん違うがあのライブは成功と言っていいだろう。あの時、最高の時間を過ごせたはずだから。

 しかし、読んでいるとやっぱり感じてしまうな。どうしてもXやLUNA SEAとなると世代が自分よりも一つ二つ上なのであのヴィジュアル系勃興期の狂熱というのは味わうことができなかったことを。俺はその後のLUNA SEA再始動からの98年のヴィジュアル全盛の時に音楽聴き始めた口だから本著を読んでも知らないことの方が多いです。ヴィジュアル系はヤンキー系の文化やヴィジュアル系が地方発信の音楽ということ、Xを頂点としたカースト制度の成立、YOSHIKIは音楽業界のあり方まで変えたとかいう話。新たな発見ばかりです。ただ時代が違うというのはあるけれども傍観者にすらなれなかったのは少し惜しいなあ・・・。ということで私はちょっと下の世代にあたるLa'cryma ChristiやSIAM SHADEが好きだったわけです。

 それにしても、一番客観的にまた多角的にヴィジュアル系を語った大槻ケンヂとの対談が一番おもしろかった。特有のメイクの伝播の仕方だとか、音楽的な発展、ファンの特徴など色々とウラの方まで語ってくれているからところどころ笑えます。オーケンは本当に的確にこの文化を捉えているなあと感心の一言。それになぜかMana様を凄く評価しているところもおもしろい(おもしろがっている気もしますが)。音楽同様に目の付け所がやっぱり違いますね。それに最後に出てくる「V系はいろんな人たちがちょっとずつ発明した」との言葉は納得させられたなあ。LUNA SEAがヴィジュアル系の完成系と彼が言うのにも納得。

 現在のヴィジュアル系は縮小再生産の繰り返しで、どんどんと音楽性も奇抜さも個性も創世記から比べるとだいぶ薄く小さくなってしまったなと思う。今のヴィジュアル系でテレビで見ても一言で言えば"普通"というか見ても驚かないレベルというか。音楽はDIR EN GREYの系譜で音楽的な広がりを感じないのが多いし、ルックスも小奇麗な感じで収まってるし。この対談で大槻ケンヂが言うとおりにMALICE MIZERがピークだったというのは正しいことなのかもしれない。ルックスも音楽性も兼ね備えていたMALICE MIZERのように特異なバンドはもう出てこないと思う。本当にテレビで見たときは腰抜かしたからなあ・・・。

とりあえず本著を読んで納得したのは以下の2つのこと。

・hideで始まりhideで終わったV系の時代
・ヴィジュアル系という言葉は結局誰が最初に言い出したのかよくわからないこと


 しかしながらYOSHIKIが言うには「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」から誰かが引用したんじゃないのが一番有力らしい・・・やっぱりそうなのか!!でも誰が最初に言い出したかは結局わからずじまいってとこがオチとしていいんじゃないでしょうか。

 ヴィジュアル系に何らかの影響を受けた人は読んでみることをオススメします。

執筆日 / 2008/05/12